最果タヒの詩集をもとにした青春ラブストーリー「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

「夜空はいつでも最高密度の青色だ」のあらすじ

主人公の美香は、女子寮で暮らす看護師。
死と向き合うことも多い仕事のなかで、世の中に対してかなり冷めた視点を持っている。
しかも夜はガールズバーでアルバイトをしており、「この星に本当の恋愛なんてない」なんて考えも。

一方、建設現場で不安定な日雇い労働者として働く慎二は、左目がほとんど見えない環境でアパートで一人暮らし、少し年上の智之や中年の岩下、フィリピン人のアンドルスなどと友人づきあいをして過ごす毎日。
そんな慎二がある日が友人たちに誘われてガールズバーを訪れると、カウンターで美香が出迎えた。
その後、店が終わった後に仕事を終えた美香とばったりと遭遇、夜空に美しい青い空が見えるなかで二人はちょっとした会話を交わす。

一方で美香は智之と連絡先を交換しあってデートを重ねる関係になっていたが、そんなある日突然智之が倒れ、そのまま亡くなってしまう。
死因は脳梗塞で、病院で美香と慎二は再び顔を合わせるが会話が噛み合わないまま別れる。

その後も、厳しい現実を突きつけられながら暮らす慎二。
そんなある日、中年の岩下が恋に落ちます。
その岩下の元気な様子に影響を受ける形で、慎二は思い切って美香のもとを訪れる。
女子寮なので中に入れずに外で朝まで待っていると、帰宅した美香と遭遇し、彼女に部屋に入れてもらうことに成功。
ここから二人の間で歯車がまわりはじめたように少しずつ関係が深まっていき、不安定な世の中のなかでもなんとか生きていこう、という希望を見出していくのだった。

「夜空はいつでも最高密度の青色だ」のキャスト・見どころ

主人公の美香は石橋静河、慎二は池松壮亮、智之はも松田龍平、そして岩下は田中哲司が演じている。
正直なところ、地味な作品だ。
ぼくは序盤の段階で「これはなかなかいけそうだ」と感じたけど、それはちょっと人と変わっているからかも知れない。
とくにドラマティックな展開があるわけでもないので、あらすじを紹介するのもちょっと大変なくらい。

でも見ているうちに、どんどん作品の世界観に引き込まれている魅力を持っている。
この魅力に気づくことができるかどうかが、この作品を楽しめるかどうかのポイントではなかろうか。

厳しい世の中、不安だらけの環境の中でもがきながら生きていく人たち、厳しい人生を生きるために冷めた視点を身に着けなければならなかった人たちが、不器用な形で関係を気づきながら希望を見出していくストーリー。
その途中には悲しい別れやお互いを傷つけ合うような出来事も起こる、それに対して得られた希望は決して大きなものではなく、ごくささやかな希望に過ぎない。
それでも人生には意味がある、生きていく価値がある、そんなメッセージが込められていると思う。

生きていく中で不安や孤独を感じている人ほど、心に刺さる部分がある作品かもしれない。
ぼくにとっては「どこが素晴らしいのか」を説明するのはちょっと難しいんだが、忘れがたい印象を残してくれる作品となった。