「四月物語」のあらすじ
タイトルの通り舞台は四月、新年度がはじまる桜の季節にヒロインの卯月が北海道から上京してくるところから物語ははじまる。
武蔵野にある大学に通うためだったが、その新生活のなかでいろいろな人と出会い、交流を深めていく。
しかし彼女は、大学の志望動機を聞かれるたびに言葉を濁してしまう。
なぜならその志望動機には、人には言えないちょっと不純な理由があったのだ。
じつは卯月は、高校時代に1学年上の山崎に密かな想いを寄せていた。
とはいえ完全な一方通行の片思いで、高校時代には会話すらロクに交わしたことがないほど。
しかし彼女は山崎のことを諦めきれず、再会するために東京の大学を受験することにしたのだ。
そして卯月は山崎が書店でアルバイトをしていることを知り、彼と再開するために通い詰める。
そしてようやく再会を果たし、山崎も卯月が同じ高校の後輩であることを思い出してくれた。
その後帰宅しようとしたものの、雨が降り出す。
そこで山崎が卯月に傘を貸そうと申し出てくれたが、卯月は遠慮して断ってしまう。
しかしその後、本格的な土砂降りになったためやむを得ずとあるギャラリーの入り口で雨宿りをしていると、加藤という初老の老人が彼女に傘を貸してくれる。
卯月はその傘で再び書店に戻ると、山崎に傘を貸してほしいと頼む。
卯月がその傘でギャラリーに戻ると、老人に借りた傘を返し、彼が立ち去るのを見送ります。
その様子を見ながら、彼女は高校の先生に武蔵野の大学に合格できたのは奇跡だと言われたのを思い出す。
そして今回のこの傘をめぐるやり取りは「愛の奇跡」だ、と思いながら、山崎と再開し少し距離を縮めることができた喜びを噛みしめるのだった。
「四月物語」のキャスト・見どころ
ヒロインの卯月は松たか子、山崎先輩は田辺誠一、ギャラリーの老人(加藤)は加藤和彦、さらに卯月の父を松本幸四郎、兄を市川染五郎が担当するなど、松たか子の実際の家族が出演しているのもこの映画のポイントだ。
正直なところ、この映画の見所はストーリーよりも卯月役を演じた松たか子の魅力に尽きるといってもいい。
自分はよく「好みが人とちょっと違っている」なんて人から言われるが、この映画における彼女には魅了されたと素直に認めざるを得ない。
だから、彼女でなければこの映画の魅力は半減したどころではないと思う。
この映画を見たときには、「こんな可憐な女性に片思いされてやきもきさせるなんて山崎はなんて罪深くて幸せな男なんだ!」とちょっとジェラシーを感じてしまったほどだ。
それからさっきも書いたが、松たか子の一家が家族の設定で出演していることもポイントが高い。
父親の松本幸四郎と兄の市川染五郎だけでなく母親の藤間紀子、姉の松本紀保も出演。
まさに「松本家オールスター出演」の趣だったのが、ちょっと笑えた。
松たか子と言えば、デビュー当時は「親の七光り」的な扱いを受けることもあったが、この映画ではそれがいかに的外れなものであって、彼女自身にまばゆいほどの魅力が備わっていることが明らかになっていると思う。
ぼくはこの作品を見て、松たか子への評価が一気に変わった。
彼女は家族構成などとはまったく関係ないところで、素晴らしい女優である、と。