大槻ケンヂさんの「サブカルで食う」を読んで

オーケン自身の体験をもとにアドバイス

大槻ケンヂというと、傍から見るとまさにサブカルそのものと言ってよい生き方をしてきた人のように思えます。
海外で食べたマジックマッシュルーム入りのオムレツのせいで飛行機に乗れないほどの後遺症に見舞われたり、ひどい鬱に苦しめられたりといった経験を他の著書でも書かれていますが、そういう一見ネガティブな世界や闇の世界を体験したからこそ、今のオーケンがあるんじゃないでしょうか。

しかし、オーケン自身は優越感や超越感を得るためにそんな世界を見る必要はないと本書で断言しています。
「もう一歩踏み込めば」と思いつつも、一歩踏み出せなかったことに後悔を感じる人は少なくないでしょう。
そんな人たちに対して、そんな必要な全然ないと強調します。

サブカルだから変わった経験をしてなんぼという考え方は違うとのことです。
また、できなかった自分をヘタレのように思う必要なんて微塵もないとも語っています。
これは、数々の特殊な体験を経てきたオーケン自身だからこそ言えることではないでしょうか。
サブカルにぼんやり憧れを抱く自分のような人たちの目を覚まさせてくれるアドバイスでもあります。

案外常識的かつ実践的な内容

本書は一般の人ではまず経験しないような特殊な経験をしてきた大槻ケンヂが、その経験を踏まえつつ、何かしたいと思っているのに何もできないと悩んでいる人たちにメンタルや仕事についてアドバイスするという内容です。
意外と常識的であると同時に、日々の暮らしに生かせる実践的な内容だなと思います。

本書でオーケンは自分のメンタルを守ることの大切さを説いています。
たとえば「自分学校」という考え方です。
自分学校では、自分自身に課題を出して小さなプライドを積み上げていきます。
たとえば「学校の教科はさっぱりだけど、映画は人の何倍も見ている」とか、「人の聞かないマニアックな音楽をこれだけ聴いている」とかです。

一般的には「だからどうなの?」と言われ、社会の役に立つかと言われると役に立ちません。
しかし、確実に自分の満足度は高まりますし、そうやって自分に課した課題をこなしてきた自分自身にプライドを感じることができます。
それがあるのとないのとでは、ピンチの時のメンタルの安定感は大違いです。

他にも実践的なアドバイスが多数です。
サブカルで食べていきたいなら、拙くてもいいので自分自身で表現することの大切さを説いています。
SNSで感想をつぶやくのではなく、自分で何かを生み出すことこそが大きな一歩になるのです。

また、それを続けていても、多くの人は何者にもなれないまま年を取ってしまいます。
それがつらければ思い切ってやめた方がよいとのことです。
何者にもなれなくても、自由な時間があって好きなことをしながらなんとか生きていけているのだったら、そのまま行っちゃってもいいんじゃないのというのがオーケンのアドバイスです。